PCゲームプラットフォームとして圧倒的なシェアを持つ『Steam』で、レビュー機能やコミュニティの「荒れ」が深刻な問題となっています。複数のゲーム開発者が直面している「悪意ある書き込み」や「差別的なレビュー攻撃」の実態と、それに対する運営元Valve社の対応の遅れが報じられており、同時接続者数が4200万人にも達する巨大サービスにおいて、ユーザーが購入を決めるための「レビュー」の信頼性が揺らぎかねない事態です。

放置される「悪意ある書き込み」と削除されない通報
The Guardianの報道によると、Steam上では特定の開発者やマイノリティを標的にした誹謗中傷、あるいは「アンチ・ウォーク」を掲げた組織的なネガティブキャンペーンが日常的になっているとのことです。
特に問題とされているのは、これらがSteamのガイドラインで禁止されている「侮辱」や「差別」にあたるにもかかわらず、通報しても削除されないケースが多発している点です。具体的な例として、トランスジェンダーの開発者に対する差別的な書き込みや、ゲーム内容とは無関係な政治的活動家の死をネタにするレビューなどが挙げられています。
ある開発者が自身の過去の被害に関する中傷レビューを通報した際、Steam側は当初「内容が正しいかどうかは確認しない」として削除を拒否しました。SNSで話題になってようやく削除されたものの、開発者は「嫌がらせから身を守るために、被害を証明しなければならないのか」と、その対応への絶望感を語っています。これは、単なるユーザー間のトラブルを超え、プラットフォームとして自ら問題を解決する力が弱まっていることを示しています。
4200万人の巨大市場を支えるには「人が足りない」現実
なぜ、これほど巨大なプラットフォームで管理が行き届かないのでしょうか。背景には、Steamを運営するValve社の組織構造と、急激に増え続けるユーザー数の差があると考えられます。
Steamは先日、同時に接続しているユーザー数が約4200万人を記録しましたが、Valve社の従業員数は400人未満と報じられています。投稿の監視業務の多くは外部に委託されていると見られますが、開発者からの通報に対し「コミュニティの評価機能(高評価・低評価)に任せるべきだ」という定型的な回答が返ってくることも珍しくありません。
開発者にとってSteamは、PCゲーム市場における売り上げの要であり、代わりがない存在です。「Steamにいなければゲーム会社に相手にされない」という現状がある一方で、無防備な状態で悪意にさらされ続けることに、多くのクリエイターが疲弊しています。中には、自衛のために独自の監視スタッフを雇ったり、差別的なレビューを逆手にとって宣伝に利用したりする開発者も現れていますが、根本的な解決にはなっていません。
レビューの信頼性が揺らぐ今、ユーザーに求められる視点
日本国内でもSteamの利用者は急増しており、Steam Deckなどの専用ハードも普及しています。しかし、プラットフォームの「安全性」や「公平性」が守られなければ、優秀なインディーゲーム開発者がSteamを離れる、あるいは開発そのものを諦めてしまう可能性もあります。
Valve社は現時点で本件に対する公式なコメントを出していませんが、4200万人という巨大な経済圏を維持するためには、システムの自動化や外部任せではない、しっかりとした管理体制の立て直しが急がれるはずです。ユーザーとしても、レビューを見る際は、その内容が本当に「ゲーム体験」に基づいているか、冷静に見極める目を持つべき時期に来ていると言えるでしょう。





