TSMC熊本第2工場が最先端2nmプロセスへの移行を検討か、AI半導体需要とRapidusへの対抗措置で国内製造拠点が高性能化へ

世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCが、日本国内に建設予定の「熊本第2工場」における製造プロセスを、当初計画されていた6nmや4nmから、最先端の「2nmプロセス」へと引き上げる検討に入ったとの報道がなされています。この戦略転換の背景には、NVIDIAやAMDといった主要顧客からのAI向けハイエンドチップ需要の急増に加え、2027年の2nm量産を目指す日本のRapidus(ラピダス)への対抗意識があると見られます。本記事では、TSMCの新たな動向が示唆する市場へのインパクトと、国内半導体産業にもたらす価値について解説します。

AI需要増大に伴う2nmプロセスへの大胆な戦略転換

台湾メディアMirror MediaおよびNikkei Asiaの報道によると、TSMCは熊本第2工場(Fab 2)の生産能力に関する内部レビューを行い、導入プロセスをより微細な2nm世代へアップグレードする可能性が高まっています。当初、同工場は6nmプロセスでの生産が計画され、その後4nmへの移行が報じられていましたが、今回の情報はさらに一歩進んだものとなります。

この背景には、AI産業における爆発的な演算性能への要求があります。ムーアの法則の延伸を担う2nmのような最先端プロセスに対し、NVIDIAやAMD、各種ASICメーカーからの需要が集中しており、相対的に6nmなどの旧世代ノードの稼働率は低下傾向にあります。実際、車載チップ向けに28nm等を導入した熊本第1工場においても、顧客需要がより新しい技術へシフトしたことで、一時期想定を下回る稼働状況が見られたとの報告もあります。

建設から量産開始までに数年を要するファウンドリ事業において、工場稼働時に「4nm」が既に陳腐化しているリスクを回避し、将来的なハイエンド需要を確実に取り込むための現実的な判断と言えるでしょう。

国産2nmを目指すRapidusとの技術競争と市場優位性の確保

今回の計画変更には、日本国内で2nm世代のロジック半導体国産化を目指す「Rapidus」の存在が色濃く影響していると考えられます。Rapidusは2027年初頭の量産開始に向け、技術開発と顧客獲得を加速させており、将来的に1.4nmプロセスへの拡張も視野に入れています。

TSMCの熊本第2工場が稼働するタイミングと、Rapidusの量産スケジュールが近接していることから、TSMCとしては日本国内においても「技術的リーダーシップ」を維持する必要があります。もし熊本第2工場が4nmに留まった場合、最先端ノードを求める顧客がRapidusへ流れる可能性も否定できません。

TSMCにとって、日本拠点を単なるレガシーノードの生産地ではなく、最先端チップの供給拠点へと昇華させることは、競合他社に対する強力な牽制球となります。また、このような最先端プロセスの導入に対し、日本政府も追加のコスト支援やインセンティブの提供に前向きであると報じられています。

日本政府の支援体制と国内半導体産業の新たな地平

TSMCによる2nmプロセスの国内展開が実現すれば、日本の半導体産業にとって極めて大きな転換点となります。最先端のAIアクセラレータや高性能CPU/GPUが国内で製造されることは、サプライチェーンの強靭化のみならず、関連する素材・装置メーカーへの波及効果も計り知れません。