
2012年のコンセプト発表から実に14年。長い沈黙を破り、ついに「NexPhone」が製品化への動きを見せました。本機最大の特徴は、Androidスマートフォンとしてだけでなく、Windows 11搭載PCとしても機能する点にあります。Nex Computerは、単なるOSの同居にとどまらず、外部モニター接続によるデスクトップPCの代替まで視野に入れています。価格は549ドル(約8万円台後半)と比較的安価に設定されており、2026年第3四半期の出荷に向け、公式サイトでのプレオーダーが開始されました。モバイルOSとデスクトップOSを1台に集約した本機の実用性と、その特異な仕様について解説します。
AndroidとWindows 11を1台で実現する「QCM6490」の採用
NexPhoneの核心は、再起動によってAndroidとWindows 11を切り替えられるデュアルブート仕様にあります。スマートフォンとして携帯する際はAndroidを利用し、Windows 11モードでは、かつてのWindows Phoneを彷彿とさせる専用UIでの操作が可能です。
この複雑なシステムを支える心臓部には、Qualcommの「QCM6490」が採用されました。これは「Snapdragon 778G」をベースとしたIoT・産業用向けのSoCであり、Windows on ARMを公式にサポートしている点が選定の決め手になったと考えられます。構成はCortex-A78(パフォーマンスコア)×4、Cortex-A55(高効率コア)×4となっており、現行のフラッグシップSoCと比較すれば処理能力は控えめです。
ハードウェア仕様は、6.58インチのIPS液晶(2403×1080、120Hz)、12GBのRAM、256GBのストレージを搭載し、microSDカードによる拡張にも対応します。ただし、厚さは約13.2mm、重量は約256gと、近年のスマートフォンとしてはかなり大柄で重量級です。筐体背面には円形のカメラバンプがあり、ここにスピーカーを内蔵するというユニークな設計も特徴的です。
デスクトップ環境をポケットに持ち運ぶコンセプトと拡張性
NexPhoneが目指すのは「スマートフォンとデスクトップPCの統合」です。製品には専用のUSB-Cハブが付属しており、HDMIポートやUSB-Aポートを利用して外部モニターやキーボードを接続すれば、Windows 11のデスクトップ環境として利用できます。
SoCの性能特性上、高負荷な3Dゲームや動画編集には向きませんが、Officeソフトの利用やWebブラウジングといった事務作業であれば、十分な実用性を発揮するはずです。また、OSの自由度を求めるユーザー向けに、Windows 11の代わりにDebian(Linux)を動作させることも可能とされています。
バッテリー容量は5,000mAhでワイヤレス充電にも対応しており、防水性能も確保されています。10年以上前の構想であった「スマホがPCになる」というビジョンを、現代の技術水準で形にした製品と言えるでしょう。

重量と性能の制約を許容できるなら、唯一無二のサブ機になる
本機は約8万円台後半という、実験的なデバイスとしては手頃な価格設定が魅力です。日本を含む多くの国への発送に対応しているため、入手性は悪くありません。
ただし、Snapdragon 778G相当の処理能力で動作するWindows 11が、どこまで快適に動作するかは冷静に見極める必要があります。メインのスマートフォンとして使うには重厚すぎますが、外出先で「どうしてもWindows環境が必要になる」エンジニアや、Linux環境を持ち歩きたい開発者にとっては、代わりのない一台となるはずです。
ロマンだけでなく実用的な「ポケットPC」としての可能性を秘めたNexPhone。QCM6490の最適化次第では、ニッチな市場で確固たる地位を築く一台となりそうです。





