Windowsのアプリストアやモバイル戦略が失敗し続けてきた理由

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スマホを使っていると、iOSもAndroidも、アプリストアが便利です。

カテゴリに分かれ、人気のアプリ、便利なアプリを手軽にダウンロードできますし、アップデートや課金も特別な手間無く簡単にできます。

アプリストアは、いまやモバイル機器の利用において、インフラといっても過言ではありませんし、これがあるからこそ現在の便利なスマホ利用が実現しているとも言えます。

ただ唯一、この仕組みが上手くまわっていない巨大なOSがあります。

Windowsです。

皆さんも、Windowsでアプリ(ソフト)を利用する時は、最初から入っているOfficeを使ったり、ブラウザからダウンロードしていると思います。

Windowsにも、「Store」というアプリストアはあります。

でも、ほとんど使っていない方が多いのではないでしょうか?

使い勝手もいまいち、アプリも豊富になさそう、タイルデザインの見た目も半端なスマホみたいな感じで、どうにも使う気が起きません。

挙げ句の果ては、スタートメニューにWindowsストアアプリのメニューが最初から大量に入れられているなど、押しつけがましいとも感じます。

どうしてWindowsは、アプリストアというインフラ構築に失敗したのでしょう?

これには、マイクロソフトの長い試行錯誤と迷走の歴史があります。

モバイル版Windowsの系譜

アプリストアという文化は、モバイルOSの世界と共に発展してきました。

マイクロソフトも、もちろんこの分野に巨大な投資を続けてきました。

モバイル版のWindowsには、大きく分けて三つの時代があります。

  1. WindowsCE、Windows Mobile(1996年〜2012年)
  2. Windows Phone(2010年〜2014年)
  3. Windows 10 Mobile(2015年〜)

1と2の間にはiPhoneとAndroidの躍進、2と3の間にはWindows10のリリースという重要な出来事があります。

マイクロソフトは、それぞれの期間で異なった目的のもとで開発し、結果として上手くはいきませんでした。

それぞれの概要を見ていきます。

1.WindowsCE、Windows Mobile(1996年〜2012年)

これらはベースは同じです。

PDAのような手帳型からスライド式キーボード付きのスマホ、タブレット、フルキーボードが搭載されたミニPCから見た目はほとんどノートPCのようなものまで、ありとあらゆる形態のデバイスに搭載されました。

操作性はWindows 9xと同様で、スタートメニューがあり、見慣れたUIです。

win32アプリと呼ばれる、いわゆるWindowsアプリは動作しません。

このOSの目的は明らかで、フルサイズのWindowsが動かない小型の端末でも、フルサイズのWindowsと同様の操作性と利便性を提供しようというものでしょう。

ただ、フルサイズのWindowsは、マウスとキーボードとディスプレイという三点セットが揃って操作したときに最も使いやすいように設計されており、タッチパネルやスタイラスペンで操作するような端末が多かったWindowsCE機は、アプリも少なく大きなヒットにはつながりませんでした。

2.Windows Phone(2010年〜2014年)

続いてリリースされたWindows Phoneは、それまでのWindowsCE/Mobileとはアプリの互換性も捨て去り、まったく新しいOSとして設計されました。

Windows8/8.1で有名になったタイルUIが採用されました。


画像引用元:Wikipedia

iPhoneともAndroidとも異なるUIを、PCとスマホなどのデバイスの境なく共通で使えるものとして打ち出すというコンセプトは、WindowsCE/Mobileの思想の延長線上にあります。

結果は散々たるものでした。

ご存じWindows8/8.1はあまりに使いにくいと、その後のWindows10でスタートメニューが復活されましたし、Windows Phoneを使っている人など周りで見たことがないと思います。

ここまでに、失敗の理由を読み解くヒントがあります。

  • WindowsCE/Mobile、Windows Phoneはともに、PCとモバイル端末でシームレスに壁無く同じUIが使えることを目指した
  • PCのWindowsが上手くいっていたときのWindowsCE/Mobileは、PCのWindowsのUIをモバイルに取り入れて失敗した
  • PCのWindowsとモバイルのWindows双方を同時に統一感あるものに変えたWindows Phone/Windows8は、両方失敗した

つまり、PCとモバイルで統一されたUIを目指して作られたWindowsは、WindowsCE/Mobile, Windows Phone, Windows 8/8.1と、すべて失敗しているのです。

3.Windows 10 Mobile(2015年〜)

Windows 10 Mobile は、Windows 8/8.1の大失敗を反省して作られたWindows 10のモバイル版です。

ここでも、マイクロソフトはWindowsをモバイルとPCでシームレスに統一されたUIで使えることを目指しています。

さらに、アプリに関しても、既存のWindowsアプリ(win32アプリ)とは異なる、Windowsストアアプリという形で、同じものが使えることを目指しています。

ただ、現在あなたの周りに、Windows 10 mobile搭載スマホを使っている人はいないんじゃないでしょうか。ドコモやauのお店にも、売っていません。

Windowsの新しい試みが失敗する時の共通パターン

上記で書いたように、

  • PCとモバイルで、統一UIを目指す

ものは、すべて失敗しています。

また、

  • 過去のソフトウェア資産(win32アプリ)を捨てたもの

も、すべて失敗しています。

Windowsストアアプリだけでなく、Windows CE、Windows RTもそうです。

MacOS XでAppleがすべての過去のアプリ資産を捨ててもうまくいったのは、MacOSにはそもそも(今でも)ほとんどアプリが無かったからです。

豊富なアプリが存在するWindowsで、あえてそれを捨ててゼロの土俵で戦い始めるのは、あまりに分が悪いですし、言い方は悪いですが、ユーザーはWindowsのUIが使いたくてWindowsを使っているというよりは、Windowsのアプリ(win32アプリ)が使えるから使っていると思います。

Windowsでアプリストアが失敗している理由

Windowsは新しいUIを採用し、既存アプリを捨てないと、iPhoneやAndroidと同じようなプログラム開発環境を含めたアプリストアというエコシステムは構築できません。

ただ、それをやってしまうと、既存のwin32アプリを捨てることになるため、UIに愛着を持たれているわけではないWindowsは失敗してしまいます。

また、iOSやAndroidのように、ほとんどすべてスマホで使われるというものと異なり、WIndowsはデスクトップ、クラムシェル、タブレット、2-1、スマホと、ありとあらゆるデバイスで使われてしまいます。

そういう環境が、マイクロソフトに、デバイスを超えたUIを実現しようという動機付けを与えるのですが、それをやると今度はWindows8のように肝心のPCでも使いにくい、スマホでも微妙、みたいなダメな合いの子ができあがってしまいます。

では、マイクロソフトはどうすればいいのか?

マイクロソフトは、公式の「窓の杜」や「Steam」を運営すべき

マイクロソフトが作るべきアプリストアの形は、AndroidやiOS、MacOSのように、開発環境から審査・配布までを包括したエコシステム全体ではないと思います。

「窓の杜」や「Steam」のように、基本はアプリをダウンロードする場所の提供というのが、一番いいのだと思います。

「窓の杜」や「Steam」は、課金や配布、アップデートの仕組みは提供しますが、彼らのAPI(プログラム開発の部品のようなもの)を使わないとアプリが作れないわけではありません。既存の秀丸エディタや三國志などのアプリを、販売者がアップし、配布する仕組みです。

マイクロソフトは、過去のwin32アプリすべてに、これから新しくAPIを作ってそれを採用させるのは無理です。それはこれまでの失敗が何よりの証拠です。

また、だからといって、既存のwin32アプリを捨て去ると自分の首を絞めることになります。これまた過去の失敗が物語っています。

そのため、既存の膨大なwin32アプリをアップでき、カテゴリ分けされてダウンロードができ、レビューやアップデートもでき、必要なら課金の仕組みも用意してあげたようなプラットフォームを提供してあげるのが一番うまくいくと思います。

win32アプリを捨て去るのではなく、逆にお墨付きを与えてそれを増やすようなストアです。

モバイルに関しては、UIとアプリの統一という方向性は捨てるべきだと思います。

Appleも、iOSとMacOSの統合は無いと断言しています。それは正しいと思います。

UIやアプリを統一するのではなく、それぞれのOSはそれが最も使われるデバイスで一番使いやすいように設計し、アプリについては同じものが両者で使えるというのではなく、クラウドを通じてシームレスにデータのやりとりを行えるようにすれば十分でしょう。

すべてのアプリが両方で使えるという表面的で実を伴わない理想を追うよりは、モバイルプラットフォームはモバイルプラットフォームとして打ち出しながら、そのモバイルアプリがWindowsでも使える、という形にした方が、マイクロソフトにとって利益が大きいように思います。

おわり

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