スマートフォンの普及に伴い、ガラパゴス・ケータイ(ガラケー)などと言われるフィーチャーフォンは、これまでシェアを順調に落とし続けてきました。
その結果、かつてはソニーエリクソン、NEC、京セラなど数多くのメーカーが有名な携帯電話をローンチしてきましたが、現在では多くのメーカーがフィーチャーフォンから撤退しています。
写真はmova SO505i(ソニーエリクソン)
この流れを受け、かつてのモバゲーなどフィーチャーフォンに最適化されたウェブサイトやアプリも次々にスマホに最適化されたインターフェースに変わっていきました。
フィーチャーフォン時代は、モデルやキャリアによって、最適なインターフェースが異なっており、すべてに最適化したアプリ・サービスを構築するのはとても面倒でした。
スマホになってからは、モバイルのブラウザはChromeかSafari、OSはiOSかAndroidと集約が進み、アプリやウェブサイトの運営者としてはだいぶメンテしやすくなりました。
(とはいえバージョンアップ対応など、まだまだ煩雑ではありますが)
さて、この流れですが、2019年から少し潮目が変わるかもしれません。
その理由は、「通信と端末の分離」です。
そもそも通信と端末の分離とは?
フィーチャーフォンの話をする前に、そもそも「通信と端末の分離」について簡単にまとめておきます。
2018年から、総務省主導で、通信と端末の分離と、通信料の適正化の方針が進められてきました。
ざっくり言えば、これまで通信キャリアは、月々の通信料金と端末本体代金をセットにすることで、通信料金の一部から補填する形で端末本体を安い価格で提供してきました。
これが、他社からの乗り換えを含む、キャリア各社にとっての新規顧客の獲得のため、機種変更よりも他社からの乗り換えでの端末代金を大幅に値引き、その原資として長くそのキャリアを使っているユーザーの通信料を充てているというような状態が続いていました。
これは不公正ということで、総務省主導により、通信料金は通信だけの料金、端末本体代金も本体だけの代金としてそれぞれ分離しようとしてきたのです。
また、高すぎる通信料の値下げもあります。
10万円以上もする端末代金の補填に充てられていたため、通信料自体はとても高くなっていました。
通信と端末の分離により、端末を買い換えないのに通信料金だけ高い状態や、乗り換えを続けて端末代をとても安くするような状態がなくなると期待されています。そもそも通信料が大きく値下がりするでしょう。
これは、2019年春から、具体的に言えば春モデルが発売する5〜6月から開始されると考えられています。
通信と端末の分離で何が起こる?
さて、この「通信と端末の分離」で、具体的には何が起こるのでしょうか?
答えは、「高い端末が売れなくなる」ということです。
なぜなら、通信料金と端末代金が別々になるということは、本来10万円以上するiPhoneは、ユーザーはそのまま10万円を払って買うことになるためです。
iPhoneもGalaxyも、いまキャリアショップに並んでいるような端末は、ほとんどが10万円クラスの本来とても高価なものです。
それらは、毎月の通信料金に数千円上乗せするだけで買えていましたが、これが難しくなります。
ユーザーからしても「毎月1〜3千円の負担で買えるならiPhoneを買っていたけど、普通に10万円の商品としてローンを組んで買うなら、いらない」となります。
現に、通信と端末の分離を進めた国(フランスなど)では、フラッグシップスマートフォンのシェアが落ち、代わりにDocomo withに代表される1〜3万円クラスのスマホが主流になっています。
日本でも、2019年の春から、同じようなことが起こるのです。
どうしてガラケーが復活する?
ここまで読めば、ガラケー(フィーチャーフォン)が復活する理由は明らかだと思います。
思い出してもらえれば、かつて携帯電話は、1〜2万円が主流で、型落ちはキャリアショップで新品で買っても数千円でした。
何万円も、場合によっては10万円以上出して2〜3年に一度端末を買い換えるなんていうことは、ほんのここ数年からです。
バリバリにゲームアプリをしたり、あらゆるアプリをいつも使いたい人は引き続きスマホを買うでしょうが、そうではない人にとっては、値段との比較でガラケーで十分ということになります。
具体的には、メッセンジャーとメール、電話、ちょっとしたウェブ閲覧、乗り換え案内、地図、カレンダー確認くらいであれば、ガラケーで問題ありません。
かつてと異なり、現在はガラケーにもAndroid互換OSが搭載されていることがほとんどです。そのままのAndroidではなく、フィーチャーフォンに最適化された軽量版で、一部アプリは動きますし、ウェブサイトも見られます。
スマホとの違いは、CPUパワーなどがないため、すべてのアプリが使えるわけではないということくらいです。メインは、プリインストールされたアプリです。
逆に言えば、必要十分なプリインストールアプリは、何年経っても使えるのです。
現に、10年前のガラケーを使っても、インターフェースとしては何も問題ないことがほとんどでしょう。
一方で10年前のスマホは、アプリも何も動かず、使い物になりません。
そもそもが動作が軽量でバッテリーも長持ちという点を重視し、最新アプリを動かすというようなことは目指していないため、ガラケーは何年経っても十分実用に耐えます。
以上のような理由から、「通信と端末の分離」によって、2019年春以降、相当数のユーザーがガラケー(フィーチャーフォン)に戻ると考えられます。
実際に分離施策を行った国では
日本だけではありません。
多くの国で、通信と端末が分離しています。
SIMはSIMだけで、それとは別にSIMフリー端末を買う、という買い方です。
たとえば最近のデイリーガジェットの記事でいえば、下記で取り上げたスペインもそうです。
上の記事にも書きましたが、スペインでは電気店に置かれているのは、1万円台のロースペックスマホか、NOKIAやLGなどのフィーチャーフォン(ガラケー)です。
所得水準も違うため、ここまでいくかは分かりませんが、日本も同じような流れが来ることは間違いないでしょう。
一部のアプリ・ウェブサイトのガラケー対応
そうなると、一部のアプリやウェブサイトは、ガラケー対応をする必要が出てくるかもしれません。
特に、数万円出してスマホを買うのではない、モバイル端末は数千円〜1万円台で十分だという層がビジターの多くを占めるようなアプリ・サイトです。
そういう層が一定数を占めるのであれば、ガラケーに対応させれば逆にロイヤルカスタマーを増やせるかもしれません。
おわりに
いかがでしたか?
スマホはハイスペック化が進んでできることが多くなってきた一方で、デザインや機能の画一化も進んできました。
かつてガラケー全盛期は、各社から様々な形状の面白い携帯電話が出ていました。
モバイラーとしても、そういう千差万別な面白い時代がまた来たらうれしいなとも思います。
おわり