アップルが iPad mini を大幅刷新しない理由と、2019年中にiPhone SE後継が出る理由

Appleが、3年以上アップデートしなかったiPad miniを、ようやく今年2019年に新しくしました。

iPad mini 5と呼称する人も多いこのモデル、CPUが新しくなったのと、初代Apple pencilに対応したこと以外は、あまり代わり映えしません。

本体デザインにいたっては、カメラの位置が数mmずれたりしている他は、ほぼ前モデルと同じです。

もちろん、筆者含めiPad miniにはファンが非常に多くいます。

にも関わらず、iPad Proはあそこまでデザインを刷新し、リニューアル感を演出したのに、どうしてiPad miniのアップデートはこういう形になったのでしょうか?

その前に、まずは今回のアップデートを簡単におさらいしておきます。

新型iPad miniのおさらい

今回発表・発売された第5世代iPad miniのスペックは、下記の通りです。

  • CPU:A12 Bionic (iPhone XS/XS Max/XRと同じ)
  • RAM:3GB(iPad mini4から1GBアップ)
  • ストレージ:64GB / 256GB
  • 認証:(最新のFace IDではなく)Touch ID
  • スタイラス:(iPad Proが対応する第2世代でなく)第1世代Apple Pencil
  • ホームボタン:(iPhone7以降の最新の感圧式ではなく)物理式
  • 本体サイズ:(前モデルと同じ)134.8×203.2×6.1mm

こうして見ると、やはり新しい要素は、

  • CPUが早くなった
  • RAMが増えた
  • 第1世代のApple Pencilに対応した

という3つに集約されます。

また、それまでになかった技術が搭載されたiPad Proと異なり、いずれもすでに出てから時間が経っている「古い」技術です。

何より、デザインが同じであり、相変わらず太いベゼルがあるため、下記のように、刷新感の無さを残念に思う声も多く出ています。

https://ascii.jp/elem/000/001/839/1839305/

https://www.gizmodo.jp/2019/04/on-the-appeal-of-an-ipad-mini-in-2019.html

どうしてAppleはiPad miniを「大幅刷新」しないか

iPad miniの8インチというサイズは、上の記事を含め色々なところで書かれているように、とても取り回ししやすい絶妙なものです。

片手で持てますし、NetflixやYouTubeで動画を楽しむにも、スマホよりも迫力があります。

メモをとるにも、ウェブを閲覧するにも、何をするにも便利です。

そのため、改めて言うまでもないですが大変人気があります。

今回の新型iPad miniが出るまで、本モデルがディスコンになるのではないかと悲しむ声が多く上がっていました。

また、下記の記事に書かれているように、スマホはテザリングと通話など必要最低限の使い方で、それ以外はiPad miniを見る、という使い方をする方も多いです。

https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1904/10/news034.html

上記記事では、そういう用途には、iPhone Xシリーズなどの大画面モデルよりも、iPhone SEのほうが適していると書いています。

その通りでしょう。

では、なぜここまで人気があり続けるiPad miniを、Appleは3年以上放置したのでしょうか?

また、アップデートした今年2019年、なぜiPad Proのような、ベゼルが狭いモダンなデザインを含めた大幅刷新を行わず、CPUと旧式Apple Pencil対応という必要最低限のアップデートにとどめているのでしょうか?

理由は明らかです。

それは、「価格が相対的に安い小さい画面のiPad(iPad mini)を売るより、価格が高い大きい画面のiPhone(Xシリーズ)を売ったほうがずっと儲かるから」です。

その取り回しやすさゆえ、iPad miniは、稼ぎ頭であるiPhoneの売り上げの「邪魔」をするのです。

iPad Proは、新需要の開拓ですし価格も高いため、iPhone売上と相補的に働くのでiPhoneの売りを邪魔しないどころかプラスに働きます。だから刷新するのです。

iPhoneの売上がAppleにとって、いかに生命線なのかは、決算を見れば明らかです。

2018年度第4四半期決算で計上された売上高約6兆5千億円のうち、実に60%がiPhoneからあがったものです。

スマホが低迷する中、アップルが急いで動画配信や雑誌、ゲームなどのサブスクリプション(月額課金)モデルに移行しようとしているのは、他社と同様です。

ですが、足下を見ると、iPhoneが売れなくなったらAppleは終わり、という事業構造になっているのも厳然たる事実です。

しかも、クローズドなプラットフォームであるアップルにとって、サブスクリプション(月額課金)がうまくいくかどうかは、ハードウェア特にiPhoneが引き続きシェアを持ち続けられるかにかかっています。

そのため、「iPhoneは安いもの(古いもの)を使い続けて、メインはiPad mini」という使い方が快適にできるタブレットを、そこまで魅力的なものにするわけにはいかないのです。

iPad miniを売るよりも、大きい画面のiPhoneを売った方がアップルは何倍も儲かります。

また、同じ理由で、iPad miniがリニューアルした今年、それと組み合わせると必要十分な大きさと性能と手頃な価格のiPhone SEについても、早々にアップデートすると考えられます。

また、リニューアル版iPhone SEは、おそらく価格を上げるでしょう。

これにより、iPhone SE + iPad miniという組み合わせで、iPhone XS/XS Maxなどの大画面スマホと同程度の収益を確保しようと考えているでしょう。

アップルが今後、iPad miniをiPad Proのように大幅刷新するとすれば、それはサブスクリプション事業でやっていける、と彼らが確信したタイミングです。

それまでは、大幅刷新でiPad miniに新しい需要を喚起するようなことはしないでしょう。

ただ、雑誌や動画のサブスクリプションにとって、あのサイズの端末は必要なため、ディスコンもしません。

あくまで、従来のminiのファンに対し、そのリテンション(買い替え需要)をメインにとっていくような程度の「刷新」にとどまるということです。

おわり