CortanaのAlexa統合にみるマイクロソフトの巧妙な「パラサイト」アプリ戦略

昨日マイクロソフトが、iOS向けのCortanaアプリをv3.3.1にアップデートしました。

最大の特徴は、Cortanaのアプリ上から、AmazonのAlexaを操作できることです。

そのためには、“Hey, Cortana, open Alexa… Switch on my bedroom lights.”などと言います。(日本語版はまだ出ていないため、日本語でなんと言うのかは分かっていません)

マイクロソフトのCortanaと、アマゾンのAlexaはどちらもAIアシスタントで、競合です。

他にも、アップルのSiriや、Googleアシスタントがあります。

その中で、どうしてCortanaはAlexaの機能を統合したのでしょうか?

近年のマイクロソフトの動きと考え合わせると、彼らの巧妙な戦略が浮かび上がってきます。

MSによる同様の取組は枚挙に暇がない

このような、マイクロソフトが競合の製品・サービスと融合するような動きは、近年非常に活発です。

たとえば、この夏リリース予定のWindows 10アップデートでは、完全なLinuxカーネルをコンポーネントとして搭載します。

Windows 10では、2016年にLinuxのコマンドシェルであるBashを搭載し、2017年にはWSL(Windows Subsystem for Linux)2を発表しました。

いよいよWindows上で、Linuxがエミュレーションから、ネイティブ稼働になります。

つまり、これまでいわばライバルの一つだったLinuxを、完全に内部に取り込んだのです。

また、同じく競合であるAndroid向けには、ホームアプリであるMicrosoft Launcherをリリースしています。

Androidをお使いの方はご存じの通り、AndroidはiOSと異なり、ホーム画面も一つのアプリとして丸ごと入れ替えられます。

Microsoft Launcherは、Androidの「顔」であるホームが、すべてマイクロソフト製のものになるのです。

ブラウザも同様です。

web開発者に評判の悪かったInternet Explorerは、ついにChromiumベースのEdgeに生まれ変わりました。

つまり、Google Chromeと同じレンダリングエンジンを搭載したブラウザになるのです。

従来との違い

Microsoft、Google、Appleは、プラットフォーマーとして競合関係にあります。

それぞれWindows、Android/Chrome、iOS/MacOSというオペレーティングシステムと、クラウドベースのコンテンツや各種サービスを提供しています。

分野によっては、AmazonやFacebookも入ってきます。

これまでの戦い方は、相互に同種のアプリをぶつけ合うというものでした。

たとえばGoogle Mapsに対し、Appleは地図アプリを出し、AIアシスタントに関しては各社がCortana、Alexa、Googleアシスタント、Siriをリリースしています。

ストリーミングの音楽サービス、ゲームサービス、電子書籍サービス、ブラウザなどで、同様の戦いが繰り広げられています。

ただ、近年のマイクロソフトのやり方は少し様子が異なります。

他社に強みがあるところには、全力で乗っかっていくような動き方をしているのです。

ブラウザでChromeが強ければChromeと同じエンジンを積んだEdgeを出し、モバイルOSでGoogleが強ければAndroid用のホームアプリを出し、開発用にLinuxが強ければWindowsにLinuxを取り込み、冒頭に書いたように今度はリビング利用に強いAlexaをCortanaから操作できるようにしてしまいました。

あくまで自社サービスにこだわっていた過去とは、明らかに戦略が異なります。

かつては、いくらユーザーが使いにくいと言ってもInternet Explorerをごり押しし、スマホ市場を取るためにWindows Phoneを出して失敗し、標準のテキストエンコーディングはShift JISを押し通してエンジニアに不便を強いていました。

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マイクロソフトの「パラサイト」アプリ戦略

結局、マイクロソフトは何をしようとしているのでしょうか?

答えは簡単で、従来とは異なる方法で、Windowsの競争力を更に高めようとしているのです。

Chrome OSに代表されるように、現在はブラウザからクラウドサービスを利用すれば、母艦のOSは何であっても多くのことができるようになってきました。

そうなった時に、マイクロソフトが自社サービスに固執していては、ユーザー離れを加速させて終わりです。

そのため、他社の優れているサービスは貪欲に取り込み、それらを、あくまでWindowsから使うことが一番便利なように持って行こうとしているのです。

マイクロソフトはモバイル向けOSが事実上ないため、Androidのホーム画面というユーザーとの一番の接点を乗っ取り、母艦のWindowsとAndroidスマホをマイクロソフトアカウントで紐付けて使うのが一番便利なように持って行きます。

開発も、ツールやリソースがそろっているLinuxを、あくまでWindowsから使うことが一番便利なようにしようとしていますし、AIアシスタントも同様です。

AppleやGoogleのように、個人向けクラウドサービスそのものからの収益を狙うのではなく、個人向けはあくまでWindowsやOfficeからの収益を最大化します。クラウドは、AzureでB2Bから収益を上げる戦略です。

そういう意味では、個人向けはWindowsとOfficeから収益を上げるという従来からの構造は変わっておらず、そのやり方が変わっただけとも言えます。

そして、最高級のソフトウェア開発力を持つ同社は、Microsoft LauncherしかりEdgeしかり、あらゆる「パラサイト」アプリで極めて高い評価を得ています。

つまりこういうことかもしれません。「Apple、Google、Amazon、Facebook、どうぞ存分に戦って下さい。勝ち残ったサービスがどの会社のものであれ、それが最高に使いやすいOSとして、Windowsを提供します」

おわり

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