ポメラDM200は、筆者が大好きなキングジム社の電子メモ「ポメラ」のフラッグシップ機です。2016年10月に発売されました。
記事に原稿にアイデアメモにと、普段からヘビーに愛用しているため、この素晴らしいガジェットについて、使い込んでいる立場からレビューしたいと思います。
これは何なの?
ご存じない方もいるかもしれませんので、そもそもこれは何のマシンなのかを簡単に解説します。
見た目はノートパソコンのようですが、主な機能はWindowsの「メモ帳」と同じです。
そう、テキストを打って打って打ちまくる。
それが、本機の最大の魅力でもあります。
これに加えて、長文を打ちまくるために便利な各種機能も搭載されています。
- 電子辞書(角川類語新辞典.S、明鏡国語辞典、ジーニアス英和辞典、ジーニアス和英辞典)
- カレンダー
先代のDM100では、簡単なExcelのようなスプレッドシートが搭載されていたのですが、最新のこのモデルからはなくなりました。
また、パソコンやスマホとテキストを同期する機能も搭載されております。
テキスト打ちに関しては、高機能エディタレベルのあらゆる機能が搭載されています。
- アウトライン機能
- 行番号表示機能
- 文字数設定機能
- 文字カウント機能
などなど。
これ以上便利なエディタはそうそうない、というレベルです。
つまり、本機は、ライターや作家、議事録をとる人など、限られたターゲットに向けて最適化されたマシンなのです。
逆に、そのような長文を書く人にとっては、余人を持って代えがたい魅力を持ったマシンでもあります。
まずは基本スペック
基本スペックは、下記の通りです。
品番:DM200
価格:¥49,800+消費税
キーボード:JIS配列キーボード、キーピッチ17mm
本体メモリ:128MB
画面:7.0インチTFT液晶、WSVGA(1024×600ドット)、バックライト搭載
インターフェイス:USB 2.0(microBタイプ)※PCリンク、充電ポートとして使用
外形寸法:約263(W)×120(D)×18(H)mm
質量:約580g
対応記録メディア:SDカード(最大容量2GB)、SDHCカード(最大容量32GB)
無線LAN:IEEE802.11b/g/n(2.4GHz帯)
Bluetooth:Bluetooth 4.0 + EDR
電源:リチウムイオンバッテリー
使用時間:約18時間
充電時間:約5時間
量販やオンラインストアでの実売価格は、3万5000円前後です。
パソコンやスマホではありませんので、そのようなデバイスと同じ観点では比較できません。
重要なポイントは、キーピッチ17mmの打ちやすいJIS配列のフルキーボードが搭載されている点、バックライトが搭載された7インチ液晶である点、バッテリが連続使用で18時間持つ点です。
SDカードが入るため、こちらに保存すればPCなどへ簡単にテキストをコピーできます。隣に見えるUSBで、充電します。
裏面はこんな感じ。少しマット感もある、シンプルでいいデザインです。
まさに「道具」に徹した感じで、好感以外の何者もありません。
本機の「命」キーボード
本機の「命」ともいえるものが、キーボードです。
先代のDM100では、多少頼りないペコペコ感があったり、個体差がありますがチャタリング(同じ文字が連続で入力されてしまう不具合)が発生したりと、テキスト打ち専用機にしては心許ないところがありました。(それでも筆者は愛用していましたが)
ですがそういった前モデルの課題を見事に払拭し、ポメラのフラッグシップ機の名に恥じない完成度になったのが、このDM200です。
キーボードは剛性があり、打鍵感もあり、長時間使用でもストレスを感じることはありません。
むしろ、打つほどに心地よくなってくる気さえしてきます。
そのため、「命」であるキーボードは、その辺のモバイルキーボードや下手なノートパソコンのものよりも遙かに優れたものが搭載されています。
「テキスト打ちしかできない」ことが最大の魅力
スマホやPCは、基本的には「なんでもできるよ、便利に早くできるよ」という点で競い合います。
ただ、本機は、「テキスト打ちしかできないよ、他のことはできないよ、でもテキスト打ちは最高に心地よくできるよ」という特徴があります。
そのため、ウェブも見たい、メールも返したい、音楽も聴きたい、みたいな人は、おとなしくスマホやPCを買うべきです。
本機は、テキスト打ちしかできない、ゆえにテキスト打ちにとことんまで集中できます。
筆者は、朝、会社に行く前に、ファミレスやカフェで本機を開き、諸々の原稿を書いています。
ノートパソコンやタブレットで同じ事をやろうとすると、結局半分くらいはウェブやツイッターを見てしまいます(反省)
ただ、本機は、テキスト打ちだけにとことん集中できます。
近年、たとえばMacのstoneやiA writer、クラウドエディタのwriteBoxなど、とにかく書くことだけに集中でき、他のことはあえてできないようにする、というコンセプトのエディタが増えてきています。
物書きに徹しようと思ったら、そういう方向に行くのでしょう。
ただ、Macやウェブベースでは、たとえそのソフトがそういったコンセプトで作られていたとしても、そもそもOS的には何でもできてしまいます。
ただし、本機は異なります。
ハードの設計からOSまで、すべてが「テキスト打ちに集中する」という一点に絞って構築されているのです。
これに勝るテキスト打ち端末は、世界にこれ一台しかありません。
純正ポーチも地味に便利
持ち運ぶことが多くなる本機ですが、純正のポーチが用意されています。
実売価格3000円ほどです。
純正のため、フィット感は完璧です。
また、下記のように、パームレスト(腕を置いてキーボードを打ちやすくするクッション)として使うことができます。(使っていませんが)
課題
ここまでの完成度になると、あまり課題が見当たりません。
「あの機能もほしい、これも付けて」というのは、そもそも本機の主旨に反します。
強いて言うなら、Wi-Fi機能が搭載されたのですが、その接続が悪いことくらいでしょうか。
もちろんウェブやメールのためでなく、Gmailアカウントを使ってテキストを同期するためだけの通信機能なのですが、接続に時間がかかったり、うまく電波を拾えなかったりします。
ただこれも、QRコードやSDカードを使ったデータのやりとりで何の問題もありません。
あとは、これは100%好みの問題なのですが、筆者が理想とするキーボードは、ThinkPadのものか、モバイルギアのものなので、打鍵感がもうすこしある方が好みです。
ただ本体の薄型化との兼ね合いもあるでしょうし、本機のものも打ちにくいことはない(むしろとても打ちやすい)ため、問題というレベルではありません。
あとは、起動速度ですね。
DM100の時はそれこそ本体を開いて1秒以下で画面が表示されていたのですが、本機では4秒ほどかかります。
近頃はスマホもPCも即起動が基本なので、慣れが必要です。
ただ、一日で慣れます。
というのも、スマホでしたら一秒でも早く返信したい、ウェブで見たい、カメラで撮りたい、といったような一刻を争う立ち上げ方が多いのですが、本機はあくまで「テキスト打ち」のためだけに存在しており、「一秒でも早く」という場面はあまり存在しないためです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
テキスト打ちというのは、シンプルに見えて、その実ものすごく深い世界です。
パソコン黎明期から、常に人々のユースケースや興味関心の中心の一部であり続けました。
だからこそ、数え切れないほどのハードやソフトが、現在まで「テキスト打ち」を快適にするという目的のために開発され続けています。
その中で、本機は一つの到達点であり、今後も職人的なこだわりを究めていってもらいたいと思います。
まさに日本メーカーが得意とする領域でもあると思います。
こんな魅力的な端末を出してくれて、キングジムさんありがとうございます、これからもすごいポメラをお待ちしています、といった感じです。
おわり