皆さんはQiなどのワイヤレス充電器は使っているでしょうか?
充電器自体は持っている方は多いかもしれません。
ただ、もう使わなくなって、普通のケーブル充電に戻したという方も多いのではないでしょうか。
GEEKな人が多い筆者の周りも、日常的にワイヤレス充電器を使っているという人は少ないです。
ワイヤレス充電器は、「スマホやタブレットを置くだけで充電ができる」という説明だけを読むと、一見してとても便利なもののように感じます。
ただ、実際に使ってみて、見た目の珍しさが一段落した後、これが本当にケーブル充電よりも便利かといわれると、「?」となることが多いのが実態ではないでしょうか。
その理由を5つにまとめました。
1.充電スピードが遅い
まず、ケーブルによる充電と比較して、充電スピードが劣ります。
近年のUSB PD(Power Delivery)対応スマホでは、ケーブル接続で18Wの充電ができます。
いっぽうのワイヤレス充電は、急速でもせいぜい5〜7.5W、よくて10W前後です。
そのため、充電にスピードを求めるシーンでは、まずケーブルによる有線接続が選ばれます。
ただこれも、「置くだけで簡単に充電ができる」という特徴が本当にその字面通りであれば、「急ぐときはケーブル、普段はワイヤレス」という使い方も広がったかもしれません。
しかし、次の2で書いていますが、そもそもワイヤレス充電自体、そこまで手軽なものではないのかもしれません。
2.そもそもケーブルと手間がそこまで変わらない
この点が、ワイヤレス充電器が盛り上がらないもっとも核心的な理由ではないかと考えています。
この話を始める前に、まずワイヤレス充電器の種類をまとめると、3種類あります。
まず、Amazonのワイヤレス充電器売れ筋1位のANKER製PowerWaveに代表される、↓のスタンドタイプです。
次が、Amazonのワイヤレス充電器売れ筋2位のNANAMI Qi充電器に代表される、マットタイプです。↓
最後に、サムスンの純正チャージャーに代表される、複数端末が充電できるタイプです。↓
(↓はサムスンのGalaxyとGearを同時に充電できるというのが売りです)
さて、上記いずれも使ってみると気づくのですが、スマホを置く場所というのがかなりシビアに決められています。
というのも、ワイヤレス充電は充電器とスマホのコイルの位置をきちんと合わせないといけないため、1cm程度ズレると充電がスタートできないのです。
QiはX/Y/Z軸いずれも10mm程度が限界とされます。充電器の厚み、スマホの厚みを勘案すれば、カバーは3mm程度が限界となります。
過去に、Appleは「AirPowerマット」と呼ばれるワイヤレス充電パッド(上記の「マットタイプ」)を発表し、その後実際にリリースしようとして、AirPodsのパッケージにも記載されたことがありました。
しかし、AirPowerマットは開発中止に追い込まれ、アップルは謝罪のレターまで送っています。
その理由がまさにこれで、Appleはユーザーの利便性を考え、マットのどこにiPhoneやApple Watch、AirPodsを置いても充電できるようなワイヤレス充電器を作ろうとして、失敗したのです。
コイル位置などの設計がうまくいかず、結局は上記サムスンの充電器のように、iPhoneはここ、AirPodsはここ、といったように、決められたコイル位置にデバイスを正確に置かないと充電できないものしか、Appleにも作れませんでした。
そのため、Appleはワイヤレス充電器の発売を取りやめたのです。
Appleのユーザビリティ本位の姿勢は素晴らしいですが、まさにこれが現在、ワイヤレス充電器が思ったほど盛り上がっていない最大の理由の一つでしょう。
3.ケーブルと比較してむしろ不便なシーンも多い
これは、上記2と密接に関わります。
ワイヤレス充電器で充電する際は、コイル位置を合わせるために端末位置を調整しないといけません。
そしてめでたくワイヤレス充電がスタートしたとしても、寝ている間にスマホに手が当たって位置がズレてしまうと、朝になっても充電されていないという悲劇が起こります。
これでは、USB Type-CやLightning端子を差し込む方が、ずっとラクで安心ではないでしょうか?
4.対応機種がまちまち
そもそも最新スマホを見ても、Qiに対応しているものとしていないものが入り交じっています。
PCについてはほぼ対応していません。
一部の完全ワイヤレスタイプのイヤホンは対応していますが、それ以外のBluetoothイヤホンは対応しているものはほとんどありません。
USBのように、充電が必要な機器がすべからく対応していればよいのですが、そうではない現実があります。
そもそもケーブルがたくさんある状態を是正したいのに、「スマホだけは対応しているから、スマホだけワイヤレス充電で」とはならないでしょう。
むしろ「持っている機器はすべてUSB Type-C充電だから、Type-Cケーブル一本で」といった方がずっと現実に合っていて、スマートです。
5.割高
近頃はQi充電器もだいぶ値下がりしてきましたが、同じ条件で比較すれば、有線タイプのチャージャーよりも割高です。
たとえばAmazonでの充電器売れ筋1位の下記Ankerのチャージャーは、ポートが2つついていて、急速充電に対応していて2,000円以下です。
以上、ワイヤレス充電がイマイチ盛り上がらない理由を5つにまとめてみました。
では今後、このジャンルの製品が盛り上がるためには、何が必要なのでしょうか?
結論:さらなる普及の方向は2つ
一つは技術寄りの、もう一つは企画寄りの話です。
1.置く場所を自由に選べるようにする
AppleのAirPowerが目指した、「パッドのどこに置いても充電できるワイヤレス充電器」の実現です。
マットが1枚あれば、スマホもウォッチもイヤホンも、どこに置いても充電できるのであれば、まさに「置くだけで簡単に充電」できるワイヤレス充電器の理想が実現されますし、対応機器も増えるでしょう。
空港などの公共スペースでの設置も進むものと思われます。
2.他のユースケースと融合する
次は商品企画観点での方向性です。
↓のGAZEPADは、マウスパッドがワイヤレス充電器を兼ねています。
PCを使いながら隣でスマホを充電しておく時に、特別にチャージャーを準備しなくてもマウスパッドをこれにすればよいという便利アイテムです。
このように、完全にケーブル充電を代替するものというよりは、特定のユースケースに融合させてワイヤレス充電機能を活かすというのが、1の制約下で有効な手段です。
いずれにせよ、近未来感アイテムとして期待されたワイヤレス充電器、今後さらに生活を便利にするアイテムに進化していってほしいですね!
おわり
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