2018年頃から、UMPCと呼ばれる7〜8インチ台の超小型ノートパソコンが続々と市場に登場しています。
デイリーガジェットは、このジャンルをどこよりも愛するメディアとして、丹念に追い続けています。
一般的にノートパソコンは、11インチ、13インチ、15インチの3種類が主流です。
さらに、Surface Goなど2-in-1に代表される10インチ台も一部に存在した、というのがそれまででしたが、UMPC(超小型ノートパソコン)は、それよりもさらに小さい7〜8インチ台というニッチなカテゴリーです。
そもそもこのジャンルは、日系メーカーの独壇場でした。
ソニーのVAIO Type-P、東芝のLibretto、富士通のLOOK Uなど、2000年代初頭には、日本製のUMPCが市場にあふれていました。
ただ、それらはCPUがAtomで、実利用には耐えない物が多かったのです。
市場に登場するのが早すぎました。
ただ、2010年代後半から、Atomの高性能化やCore m3など、超低消費電力プロセッサの性能向上により、ようやくUMPCは実利用に耐える製品になったのです。
そこで登場したのが、中国・深圳の会社たちです。
雨後の竹の子のように、たくさんの深圳系メーカーがこのジャンルに参入していますが、現在は下記3社がこのジャンルの大手としてしのぎを削っています。
- GPD Corporation(深圳市中软赢科技术有限公司の1ブランド)
- One-Netbook(深圳市壹号本科技有限公司)
- Chuwi Innovation Technology(驰为创新科技(深圳)有限公司)
いずれも深圳の会社です。
戦略の違いが出てきた
GPDの初代GPD Pocketがヒットし、それを追うように、One-Netbook社のOneMixが、そしてChuwi MiniBookなどが出てきました。
現在は、Magic-Ben社のMAG1や、Peakagoなど、さらに新しい参入が相次いでいます。
それぞれデザインやスペックがよく似ていることから、同じような商品を出し合っているように見えます。
確かに一時期まではそうだったのですが、UMPCというニッチな市場で、それだけでは生き残っていけません。
主要3社が最近出しているモデルを見ることで、それぞれが異なった戦略を持って差別化していることが分かります。
では、見ていきましょう。
GPD Technology社
GPD社は、昨今のUMPCの先駆けのような会社です。
この会社は、明確なターゲティングを設定し、(UMPCとしては)新しいコンセプトを打ち出すことで、新たなニーズを掘り起こすことを基本戦略としています。
たとえばゲーマーをターゲットとして、ゲーミングUMPCというコンセプトの製品である、ニンテンドーDSによく似たGPD Winシリーズを出しています。↓
また、7インチUMPCもGPD Pocketシリーズとして2まで出し、その後は現在の最新モデルである、タッチパッドを搭載したGPD P2 Maxを出しています。↓
GPD P2 Maxのコンセプトは「真のUltrabook」としており、UMPCからは一線を画そうとしています。
また、GPD MicroPCは、ネットワークエンジニアなどIT専門職を主要なターゲットとした、拡張性に重きを置いたモデルです。
GPD Pocketシリーズは、昨今のUMPCの基本形となって多くの追随者を生みましたが、それ以外のGPD WinシリーズやGPD MicroPCシリーズは、同社ユニークなポジショニングの製品です。
現在、発表が見込まれているのは、AMD Ryzenを搭載したゲーミングUMPCのGPD Win Maxです。
また、Nintendo Switchによく似た端末も開発中のようです。
GPDはGame Pad Digitalの略であることからも分かるとおり、同社にとってゲーミングはコアとなるコンセプトです。
また、GPD Winシリーズや上記開発中端末からも分かるとおり、任天堂のプロダクトを強く意識しています。
One-Netbook社
One-Netbook社は当初、初代OneMixをリリースしたときは、GPDのコピーだと言われました。
初代はそう言われても致し方ない部分がありましたが、その後現在に至るまでに、GPD社とは明確に差別化したポジショニングをとっています。
現在の最新シリーズである8インチのOneMix3のラインナップを見てもわかりますが、同社はUMPCのハイエンド化を指向しています。
実際、Core i7搭載のUMPCはOneMix2sとOneMix3sのプラチナエディションだけですし、現在はOneMix 3Proとして、UMPC初の第10世代Core i5プロセッサを搭載したモデルを準備しています。
これにより、ある程度重いゲームや動画編集など、あらゆる用途でメインPCとしても耐えうるハイスペック端末としてOneMixシリーズを打ち出しています。
加えて、GPD社の製品にはない特徴として、360度回転のYoga機構とペン対応を最初に採用したことでも知られます。
Chuwi社
Chuwi社はこの分野では後発にあたります。
ただ、そもそも同社はPCやタブレットにおいては大手メーカーとして多数の実績を持っています。
そして、同社の他の端末と同様、UMPCにおいても、Chuwiの基本戦略は「コスパの高さ」です。
最新モデルはChuwi MiniBookですが、Celeron N4100搭載のベーシックモデルでは5万円台、Core m3-8100Y搭載の上位モデルでも6万円台と攻めた価格です。
また、製品開発のスピードが速いことも特徴です。
Chuwi MiniBookのレビューは↓にあります。
ニッチなカテゴリーだからこそ
UMPCは、11~15インチの一般的なサイズのノートパソコンとは、比べものにならないほど小さなニッチ市場です。
メインマシンとして使うには画面が小さすぎますし、キーボード配列も変則的で、どんな用途も快適に、という訳にはいきません。
作り手から見ると、PCは共通部品が多く、模倣するのも容易です。
だからこそ、他社と同じような製品を出しているだけでは、じり貧になってしまいます。
そのような市場で、各社が独自の戦略ポジションをとって、ユニークな製品が日々生まれています。
これは、ユーザーにとってはとてもうれしい状況です。
今後も、独自の戦略に基づき、ユニークな製品がどんどん出てきてほしいと思いますし、デイリーガジェットではそのすべてを追っていきますよ!
おわり
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コメント
>実際、Core i7搭載のUMPCはOneMix3sプラチナエディションだけですし、
平行発売しているOneMix2S Platinum Editionも、i7を搭載しています。
@もりへいさん
コメントありがとうございます。おっしゃるとおり、2Sのプラチナもでしたね。追記しました。ありがとうございます。