次世代OneMix4は10.1インチに大型化
OneMixシリーズやOneGxシリーズなどのUMPCを多数リリースしているOne-Netbook社から次世代モデルとしてリリースされるOneMix4(One 4)は、10.1インチに大型化して登場する予定です。
2020.12.15追記:正式発表になりました。↓
これまでに明らかになっている情報は、ディスプレイが10.1インチ、CPUに第11世代Tiger Lake Yシリーズ、ストレージはPCIe 3.0 x4 NVMe SSD、通信機能としてWi-Fi6(802.11ax)が搭載されるということです。
10.1インチとなると、iPadやSurface Goと似たサイズとなり、もはやUMPCではありません。
マイクロソフトやインテルが2006年に策定したUMPCの定義はいずれも9インチ以下ですし、10.1インチディスプレイとなると小型ではあるものの、感覚としてもUMPCと呼ぶのは違和感があります。
なぜ10.1インチになるのか?深圳系メーカーのUMPCが、今後どういう方向に進化していくのかを少し考察してみたいと思います。
日系メーカーが牽引した1度目のブーム
UMPC(Ultra-Mobile PC)は、9インチ以下のディスプレイサイズの超小型ノートパソコンです。
このジャンルは現在、GPDやOne-Netbookなどの深圳系メーカーがたくさんの魅力的なモデルを投入しています。日本の家電量販店にも展示されており、非常にニッチではありますが、ある種ブームの様相を呈しています。
実はこれはUMPCの2度目”ブーム”で、かつて90年代半ば~2000年代後半にかけて、最初のブームがありました。
PC/AT互換機に限って言うと、95年にはIBMの「ウルトラマンPC」こと「Palm Top PC 110」(写真)や、96年の東芝「Libretto 20」があり、家電量販店で目立つ位置に展示されて大ヒットしました。
出典:Wikipedia
「Libretto 20」はWindows95が本格的に稼働する6.1インチの小型ノートパソコンでした。
また、ソニーはVAIOシリーズで、90年代後半からPCG-C1やType P、Type Uなど、独自の先進的なミニノートを多数リリースし、学生だった筆者もあの手この手でお金をかき集め、何百万円つぎ込んだか分かりません。
そんなUMPC華の時代は2000年代後半に終焉を迎えました。
要因はいくつかあると思いますが、まずなんと言っても安価なネットブックの台頭です。
上記UMPCたちは、いずれも10~20万円と高価でしたが、AtomというCPUが登場して以降、ASUSやAcerなど主に台湾系のメーカーから10万円を切る10インチ前後のモバイルノートパソコンがたくさん出てきました。
ネットブックに限らず、BTOメーカーや台湾系メーカー台頭は、日系や米系メーカーの再編やPC市場からの撤退を促しました。端的に言うと薄利多売で儲からなくなったのです。
また、Windows 9x系ではまだしも、Windowsのモダン化やソフトウェアの高度化にともない、省電力PentiumやAtomでは満足いく処理速度を実現するのは難しく、筆者の周りのマニアたちの間でも「買っても遅すぎてすぐに使わなくなる」現象が多発していました。
より本質的なサイズの問題もあります。9インチ以下でフル機能のWindowsというのはモバイラーに夢を与えるものでしたが、やはり「使いにくい」のです。画面は見づらく、キーボードは小さく、ポインティングデバイスも小さく、バッテリーは持たず、パフォーマンスはそもそも非力です。
小型サイズのコンピュータは、2000年代後半からスマホに置き換えられていったことも大きいでしょう。
そしてこのジャンルのPCは一度衰退しました。
多くのメーカーは、撤退・再編するか、続いたとしてもノートパソコンは売れ筋の13インチ・15インチに収斂していきました。
どこへでも持ち運んでオフィスや自宅と同じように仕事ができるPCの最小サイズが13インチだというのは、多くのユーザーが認めるところだと思います。
UMPCは2度目のブーム!そして「2度目の終焉」を迎える?
2010年代後半、今度はGPD TechnologyやOne-Netbook社など深圳に本社を構える会社を中心に、2度目のUMPCブームが起こります。
それが現在進行形で進んでいるブームです。
1度目のブームとの、重要な前提条件の違いがいくつもあります。
まずは省電力CPUの進化です。
Core iプロセッサのY/Uシリーズ、Core m3-8100Y、Celeron N4100など、いずれもブラウジングやオフィスソフトであれば、ストレスなく動かしてくれます。Windowsの動作もキビキビしています。
何よりも大きいのは、スマホやタブレットの恩恵でしょう。
小型ディスプレイの高解像度化と低価格化。またタッチ操作の一般化と、それへのWindowsの対応。バッテリーもそうです。スマートフォンという手のひらデバイスの爆発的進化にともない、関連する技術が進化し、それがより魅力的なWindows搭載UMPCを簡単に生み出せる土台を作りました。
その結果、↓にまとめているような、たくさんの魅力的なUMPCが登場してきました。
ただ、今回のOneMix4(あるいはOne4)に象徴されるように、このジャンルは大型化の一途をたどっています。
最初に出てきたGPD WinやGPD Pocket、OneMixシリーズなどは、いずれも5.5~7インチでした。どこからどう見てもUMPCです。
続いて出てきたGPD P2 MaxやOneMix3シリーズ、新規参入のMagic-Ben MAG1やChuwi MiniBookなどは、すべて8インチ台です。iPad miniとほぼ同サイズで、ポケットに入れるのは厳しいくらいまで大型化してきました。
そして次回のOneMix4は10.1インチです。
ユーザーからの「キーボードを打ちやすく」「画面を見やすく」「ポインティングデバイスを改善して」などのフィードバックもあり改善を続けた結果、大型化してきたのではないかと思います。
ただ、9インチというニッチのラインを越えた先には、AppleやMicrosoft、Google、hp、DELL、レノボ、パナソニック、VAIO、富士通など歴戦の巨人がひしめくスーパーレッドオーシャンが広がっています。
10.1インチですでに、プロダクティブ方向に進化を続けるiPadやSurface Go、Let’s note RZシリーズなどと競合し、11インチ以降はさらに熾烈です。
処理速度の進化がもたらした「ゲーム機」という活路
以上のように、特定のユースケースに限定しない汎用型のUMPCは、使い勝手とサイズ感という要請と制約の中で少しずつ大型化を進めており、非ニッチ領域であるモバイルノートパソコンとの境界が少しずつ薄れていっています。
ただ、CPUの進化は、UMPCに新たな活路を与えました。
それがゲーミングです。
GPD社は当初よりゲーミングに軸を置いたメーカーでしたが、最新のGPD Win Maxはもとより、次の最新モデルであるGPD WIN3はスライド式キーボードとゲームパッドを搭載したゲーミングUMPCです。
One-Netbook社も、最新のOneGx1、まもなくリリースのOneGx1 Proを発売・発表しており、いずれもゲームコントローラーがついたゲーミングUMPCです。
深圳系の2大UMPCメーカーがそろってゲーミングUMPCに力を入れているのです。
省電力CPUが高性能化していった結果、最新のTiger Lakeでは3Dゲームも多くのタイトルが問題なく動くくらいまでになりました。
ゲーミングであれば、複数ウィンドウを開いて文字を入力したり文章を読んだり、細かい図形の修正をするといったのとはまったく違う使い方になります。
そもそも任天堂が携帯型ゲーム機を現在に至るまで継続リリースしていることからも、UMPCのサイズ感でもゲーミングという用途であれば、処理速度さえ追いつけばデバイスサイズは大きな問題にはなりません。むしろどこへでも持ち運んでゲームができるという、据置機にはないメリットが出てきます。
ゲーミングだけではありません。
↓のGPD MicroPCやOne-Netbook A1は、いずれも「エンジニア向け」を訴求してリリースされました。
サーバルーム利用や現場作業など、特定のユースケースを想定して開発されたマシンです。
以上のように、汎用UMPCが「普通の」ノートパソコンが備えたユーザビリティを獲得しようとして大型化し、非ニッチとの境界線があいまいになる一方で、ゲーミングやエンジニア利用などの特定ユースケース向けのUMPCは多様な展開を見せています。この方向へは、今後も進化を続けていくでしょう。
それでも続いてほしい7~8インチ汎用UMPC
汎用UMPCはどのような用途に使うでしょうか。
ブラウジングをしたり、メールをしたり、動画を見たり、SNSをしたり、といったあたりがメインではないかと思います。ただ、これだとスマホで十分だという方も多いでしょう。
UMPCに分があるのは、長文入力やWindowsにしかないソフトの利用くらいです。
昨今の高性能CPUを搭載したUMPCでは、OfficeソフトやAdobe系クリエイティブソフトも問題なく稼働しますが、そのような細かい作業を、7~8インチの極小画面でやろうという方はそう多くないと思います。
ゲームを除けば、主要なUMPC利用には現行のCeleron N4100やCore m3-8100Y、Yシリーズの第8世代Core iプロセッサあたりでも十分なのです。
「Tiger Lakeに対応!」と言っても、「そのパワー、何に使えるんやろ」となってしまいます。それであれば、CeleronやCore mでいいからバッテリーが持ってほしいと思うかもしれません。
それでも、やはり7~8インチのUMPCには、抗いがたい魅力があります。「どこへでもフル機能のWindowsを持ち運ぶ」
だからこそ、これまで20年以上にわたって、様々なメーカーから多くのモデルが発売されてきました。
現在の汎用UMPCにも、まだまだ改善点はあると思います。キーボード、ポインティングデバイス、即時起動、バッテリー持続時間など。7~8インチサイズのまま、そういった点を洗練させていけば、巨大とはいわないまでもまだまだディマンドは尽きていないと思います。
というわけで、出れば少なくとも筆者は買うので、これからも理想のUMPCに向けて、7~8インチの汎用UMPCの命脈を保ってほしいと願ってやみません。
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コメント
UMPCの記事、とても興味深く読んでおります。一つ気になるのですが中国メーカー製品にバックドアがあるのか、その有無は確認できるのでしょうか?