下記の記事でもまとめているように、今年2019年はUMPC(超小型PC)と呼ばれる、6〜8インチの小型ノートパソコンが流行しています。
このジャンルはかつて、SONYのVAIO Type-Pや東芝のLibrettoなど、日本メーカーの独壇場でした。
しかしその後、ネットブック、Ultrabookの流れとともにノートパソコンが低価格化するとともに、一度廃れました。
しばらく経った2016年に中国深圳のGPD Technology社による、ゲーミングに特化したGPD Winシリーズや、GPD Pocketシリーズを皮切りに、One-Netbook社のOneMixシリーズなどが出てきて、その後今に至るまで再び盛り上がりを見せています。
それぞれ最新モデルは、GPD P2 MaxとOneMix3で、8インチクラスになっています。
(現在予約受付中の人気UMPCであるOneMix3シリーズ↓)
OneMix3↓
OneMix3S↓
OneMix3S Platinum Edition(プラチナ)↓
このUMPCが再び盛り上がっているのは、ひとえにインテルの省電力CPUの進化によるところが大きいです。
悪名高いAtomプロセッサも、2016年の最後の世代ではそれなりの処理能力を持ちましたし、現在主流のCore m3-8100Yプロセッサは、一般的な利用であればストレス無く動く性能を持っています。このように、何らかの技術的進化によって、UMPCは見違えるほど使いやすくなります。
かつては「小さいけど、制約が多く実利用は厳しい」PCであったUMPCは、現在では「小さいけど、それなりに使える」PCくらいにはなってきました。
今後のUMPCの進化を考えるにあたって、このようにUMPCのポジショニングを大きくシフトさせる可能性がある4つの重要な技術をまとめました。
これらが搭載されることで、さらに「異次元」の使い勝手を、今後のUMPCは獲得する可能性があります。
1.ARMチップセットとWindows対応
まずはパフォーマンスとネットワークに関係する部分です。
↓でまとめたように、ARMのSnapdragonなど、モバイル端末に主に用いられてきたチップセット(CPUやモデムで構成されるプラットフォーム)のPCへの採用が進んでいます。
すでに、LenovoやSamsungなどがSnapdragonを採用したWindows PCをリリースしています。
特徴は、省電力で一日中持つバッテリーと、ネットワークの常時接続です。
ネックは、ARMアーキテクチャにWindowsがネイティブで十分に対応していないために、動作速度が遅いことです。
ですが、上記の記事で書いたSnapdragon 8cxなど、処理速度を高めたチップセットが出てきており、またWindowsの対応も進んでいることから、これが本格搭載されるようになれば、UMPCのバッテリー持続時間やネットワーク接続が大幅に進化することになります。
2.USB PD
USB PD(Power Delivery)といえば、「PDチャージャー」と言われる急速充電器を指すと思いきや、それだけではありません。
USB PD自体は、USB Type-Cに最大100W(20V/5A)の給電機能をつける仕様なのですが、電力供給方向の切り替えも可能です。
これにより、急速充電はもちろんのこと、ディスプレイやスマートフォン、プリンタなどとUSB Type-Cケーブル一本で複数接続することが可能になります。
昨今のモバイルディスプレイ人気の背景にはこれがあるのですが、結局USB PD対応機器の充実によって、UMPCをより多彩な用途に便利に使うことができるようになります。
PD対応ディスプレイが設置されている場所ではケーブル一本で大画面出力し、それがない場所では端末のディスプレイだけで作業する、というようなことが便利にできるようになります。
現在主流のHDMIではどうしても、変換アダプタを持ち歩いたり、ディスプレイ側も電源ケーブルがのびていて煩雑になりやすく、様々な場所や施設に設置する、という訳にはいきません。
そういうインフラ的な観点でも、UMPCの活躍の場は広がっていくでしょう。
これはUMPC自体の進化というよりは、環境の変化ですね。
3.折りたたみディスプレイ
昨今話題の折りたたみディスプレイも、今後低価格化が進んでUMPCに搭載されれば、可能性が広がっていくでしょう。
これによるメリットは分かりやすいですよね。
小さい筐体で、使うときだけ画面を広げられるという特徴は、筐体サイズそのものが最大の特徴であるUMPCにとっては大きな強みになります。
4.タッチパッド搭載キーボード
最後は、マウスカーソルを動かすポインティングデバイスに関する技術です。
↓でご紹介したように、キーボードのキートップがタッチパッドになっているキーボードが登場してきています。
ポインティングデバイスは、UMPC最大のネックの一つです。
初代GPD WinにはThinkPadのようなトラックポイントが搭載されていましたが、それ以降は競合機含め、光学式の小さなタッチパッドが搭載されています。
これはお世辞にも使いやすいとは言えません。
カーソルの大まかな移動にはいいのですが、細かい移動となると意図しない動きをすることも多く、結局は外付けのマウスやタッチパッドを持ち歩く方も多いでしょう。
このような使いにくいポインティングデバイスが搭載されているのは、もちろん本体が小さいためです。
ですが、キーボードの領域をそのままタッチパッドにも使えるようになれば、この問題は解決します。
おわりに
以上、現在のUMPCが持つ制約を解き放ってくれる可能性がある技術に関してまとめました。
いずれも夢物語ではなく、対応製品はいくつも出ていますので、あとはコスト見合いでこれらが搭載されていて使い勝手のいいUMPCを作るかどうかの話です。
現在のUMPCは、どれもデザインやスペックが見分けが付かないほど似通っていて、価格競争のようになっています。
ぜひこのような新技術を搭載することで、新たなステージに進化してほしいと願っています。
おわり
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